空飛ぶ雑草

観た・行ってみた・食べてみたのログ置き場

2024年3月の見た・読んだ

映画

彼方に

 18分間によくここまで感情を詰め込んだな、という作品。それを少ないセリフで演じ切る主演がすごい。最後、それでも生きていくことを決めた顔が印象的だった。不幸への急転直下が生々しいので、最近身内に不幸があった人は見ない方がいい。

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アイ・アム・マザー

 人類vsロボットとか培養人間vs一般人類とか、SFスリラーを期待していたけど違った。テーマは面白いのになんだろうな……塩入れずに茹でたパスタみたいな。的を絞れず全体的にボヤっとしたまま終わってしまって消化不良。母の動きが「中に人入ってます」感あるのは冷めたな。エンディングの受け止め方はそれぞれだろうけど、私は人類再生失敗だと思った。一番のツッコミどころは赤子抱いたまま銃撃つシーン。絶対にマネしないでください。

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エクス・マキナ

 アンドロイド映画に対する消化不良を解消すべく見てみた。面白かった!2015年の映画だから「想像の近未来技術」に少々古さを感じるものの、CGが美麗かつテーマが面白いのでそんなに気にならない。(2019年制作の『アイ・アム・マザー』より予算ある感じしたよ。)Wikipediaで知ったけど、タイトル名は「デウス・エクス・マキナ機械仕掛けの神)=強引なハッピーエンドを指す演劇用語」に由来するみたいだね。エンディング見た後に知って手叩いて喜んじゃった。セクシストでレイシストのゴミが痛い目に合うことは期待してたからいいとして、そっちもか~という終わり方はめっちゃ良かった。「女性」性の解放という意味つながりで、話題の『哀れなるものたち』も見たくなった。(が、その後のアカデミー賞エマ・ストーンにドン引きしたので見ないことにした。)

 まさか約10年でAIがこんなにも身近な存在になってるとは思いもしなかっただろうし、AIより人型ロボットの進化の方が遅れてるとは予想外だろうな。なお、女性の裸体がもりもり出てくるので、家族の前で見るのはおすすめしないよ。

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食べて、祈って、恋をして

 昔から見よう見ようと思いながら、なぜか機会を逃し続けてたのをついに視聴した。旅しながら自分を再発見する気持ちには共感できたので、社会人になってから見て良かったな。ただ主人公が超恋愛脳だったり、周りが結婚ごり押しだったりなところには古さを感じた。さらに『終わらない週末』同様、ジュリア・ロバーツウエメセ白人様・アメリカ人様ムーブが素っぽすぎて節々で腹立つ。10代~20代前半に見て「私も自分探しの旅に出るわ!」って飛び出すと大爆死すること請け合いなので、疲れた会社員が旅行したいな~と流し見するぐらいでちょうどいいかな。私の「私を表す言葉」はまだ見つかってないので、これから旅しながら考えてみたい。

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娼婦ベロニカ

 眠れない夜にエロ欲しさで見てみたら、面白すぎて普通に目が覚めた一作。裸体は出てくるけど『ニンフォマニアック』みたいな過激派ではなく、『チャタレイ夫人の恋人』ほど心が辛くならない、ちょうどいいラブストーリーだった。実態は娼婦というより、16世紀ベネチア版の花魁。高下駄履いてたり教養こそ魅力と教えられる等、江戸と似たところがあって驚いた。

 女性の人権が皆無の時代に、結婚して男性の所有物になるのではなく、あえて高級娼婦として生きることの自由と悲哀。ドラマチックなだけじゃなくて、その苦労の一部は現代にも通じるところがあった。例えば、才色兼備の女性を逆恨みする男性がいるところ。生きづらさの根本的原因は他にあるのに、女性間で軋轢が生まれるところ。しかしピンチでも黙ってやられる女じゃないベロニカ、めっちゃ良い。最後の最後まであがいて、境遇がどうあれ自分らしく生きることの気高さを教えてくれる。マルコの妹もいいキャラだった。妻の座に収まった身とはいえ「私の娘はあなたのような高級娼婦にする」ときっぱり言い放ち、正反対の立場から自分の生き方を讃えてくれる友人。女の生き方はたったの二択でどちらを選んでも地獄だった時代に、対立だけでなく女性同士の絆もきちんと描かれることに感動した。

 知ってる役者が多くて、特にマルコは『ザ・ディプロマット』のハルじゃん!と興奮したし、法廷のシーンは痺れたよ。マルコの長台詞で場を張り詰めさせた後の "I am standing." は「絶対ここが書きたかったんじゃん!」と思わず叫んだぐらい良かった。古い映画とはいえ常に画面が華やかで、ベネチアまた行きたくなった。今度は16世紀に思いを馳せながらゆっくり散策したい。

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ペイン・ハスラー

 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』系の話が好きなら刺さるけど、あちらほど下劣ではないぶん爽快感もなかった。こういう急激に金儲けして奈落の底に沈むストーリーほど、申し訳ないけどアメリカンドリームだなぁと思ってしまう。メリー・ポピンズみたいな英国人むき出しのエミリー・ブラントも好きだけど、『プラダを着た悪魔』しかり米系バリキャリのエミリーも好き。恥ずかしながらオピオイド危機について無知だったので、これきっかけで関連ドキュメンタリーを見た。

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ミーン・ガールズ(2004)

 日本でも公演してたからずっと気になってたのをやっと見た。(Netflixで配信終了間近にならないと腰が上がらない。)コロコロ鞍替えするし頭も普通のアーロンがなぜモテるのかさっぱりだったが、女性陣は可愛く狡猾で幼くて見どころたっぷりだった。舞台のポスターとかプラスチックスしか表に出てなくて主人公の影薄いな?と思ってたけど謎が解けた。確かにこれはレジーナが強すぎる。学校ごと炎上させる発想はすごい、さすが女王蜂。ていうか『ディア・エヴァン・ハンセン』もそうだけどアメリカの高校生マジで大変すぎないか?こんな高校生活イヤすぎるんだが。ミュージカル映画版はともかく、舞台で観てみたいと思った。

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タイム

 「寿命が通貨になった世界」とかめちゃくちゃ面白いコンセプトなのに評価低いのなんでだろう、と思ってたけど見て分かった。それ以外のすべてがアカン。面白いのはその設定だけやった。兎にも角にも世界観がズルガバの甘々。キャラクターは中途半端。シナリオも陳腐。何もかもがっかり。

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ドラマ

ペイン・キラー

 すさまじくダウナー系再現ドラマ。こんな救いのない話が現実に起こり続けてるってどういうこと?しかも誰も有罪判決を受けてないなんて反吐が出る。イマジナリー創業者との対話演出は必要だったのかと思わんでもないが、そうでもせんと他に天罰を下せる役がいないんだよな。は〜胸糞。これを見てから考えると『ペイン・ハスラーズ』はちょっと軽すぎたな。シャノンがピーピー泣くのに対してフラワーズが「カウンセリングじゃないんだけど」とピシャリと言い返したシーンは、その通り過ぎて思わず拍手。金の前では倫理どころか司法すら木っ端微塵という絶望感を再確認できた。

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マンガ

守娘

 Twitterで見て気になったので買ってみた台湾マンガの日本語版。台湾の怪奇譚(伝説?神様同士の話という意味では神話?)ということで、絵も話も好みの予感がしてたけど間違ってなかった。ストーリーはヒトコワなので驚きはなかったけど、清朝台湾の事情は全然知らなかったので新鮮な感動と共に楽しめた。上下巻完結でサクッと読めるよ。

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ひとまず上出来

 エッセイは手軽に活字欲を満たせるから毎月漁りがち。これは話題がアラフォー、アラフィフ向けで、ちょっと早かったか?と思うところがありながらも、同性として共感できる部分もあり、サクサク楽しんで読めた。特に「自分を不幸せなところに置いたままにしない。自分で選択したことの責任を取る。」というのは首もげそうなぐらい同意。これは一人前の大人として本当に大事なことなので気をつけたい。自分より上の世代が人生満喫してるのを見ると、先々に希望が持てるし、私も下の世代にそう思ってもらえるようになりたいな〜、と考えるアラサーの今日この頃。

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はるなつふゆと七福神

 前月に読みたいと書いた、推し実況者の処女作。「男はみんな母を求める」とか不快で余計なくだりが随所にあった今作に比べると、第二作目はかなりブラッシュアップされてたんだなと今になって分かった。もっとやってみたいこと・書いてみたいたいことがあったけどなんとかまとめました!な感じがすごく第一作っぽい。面白かったけど、エッセイの方が言葉選びの良さや談話の上手さが出てて私は好きだな。

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1984

 ディストピア好きなくせに未読だったのを、Kindleアンリミに来てたのでやっと読んだ。めちゃくちゃ面白かった……。行き過ぎた社会の鬱々とした日々にふいに希望が射したと思ったら、足元をすくわれて元居た場所より下まで転げ落ちる。ハピエンなど無い、まさしく元祖ディストピア小説。ハクスリーの『すばらしい新世界』が超資本主義の合理的社会なのに対し、こちらは超全体主義。エンタメ要素で言えば前者の方が面白かったけど、リアリティという意味ではこちらに軍配が上がる。1949年に書いてるのに音声入力や生成AIを登場させられるとか、作者ほんま何?予知能力者?言語の破壊や相互監視など、現代社会に当てはまることもありすぎてゾッとした。そして理論武装の上手さもこちらが上。作中に登場するゴールドスタインの本は(眠たくなるぐらい)ガチの教科書で感心した。「方法は分かる、理由が分からない」の「理由」がシンプルすぎて正直腑に落ちなかったけど、いや実際の権力者なんてこんなもんかも、とむしろ現実味が増して震えた。(昨今のロシアとか見てると特にね。)付録に新言語の解説まで載せてくるのはさすがに世界観が緻密すぎて笑った。どう考えてもあなたが優勝、ディストピアの王だ。

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彼女

 久しぶりに本屋へ立ち寄った際、ビビッときたので購入した百合小説アンソロ。大満足!Amazonのレビューにもあったけど、最初の三編だけで十分元が取れた。甘くて苦い百合にどっぷり浸かれたので、とにかくそれらだけでも読んでほしい。

 一番最初の『椿と悠』は自分的ホームランすぎたし、続く二編も形は違えどいわゆる「クソでか感情」に振り回される人間模様にグッときた。4編目は人間ドラマとして面白かった。しかし、主題がゲーマーの5編目は読者層と異なる気がして、わざわざこの職業で書かなくてもいいのに感が拭えなかった。6編目は百合である必要性は?と思ってしまったし、7編目は最後に相手側の視点さえ無ければ良かった!振り回される側だけ見ていたかったのに、種明かしは不要だよ~。しかも今の時代に女性語(てよだわ喋り)は寒い……。なので、欲をいえば掲載順は変えてほしかったな。めちゃくちゃ美味しい前菜とスープ食べて、わくわくしてるところに来たメインとデザートが首をかしげる味だったので。(初手あれで読者を惹きつけたいのは分かる。分かるけど差がありすぎたのよ!)あと学生ものが多かったので、できればもっと社会人百合が欲しかった(強欲)。最近の作家さん、全然知らなかったのでこれをきっかけにまた本探してみようと思った。アンソロのいいところだね。

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おわりに

 日記は全く続かない質(読み返さないし、いずれ捨てるのに書く意味ある?となってしまう)だけど、こういう感想記録は直感的に書けるし、他人や過去の自分と比べることもできていいなと実際始めてみて思う。推しの雑談とか月末振り返りブログと比較するのも楽しい。Twitterに吐き出すには長すぎるし、ブログちょうどいいな。

 今月は月初に詰め込むように映画を見たので、来月はドラマを充実させたいな。とりあえずNetflix版『三体』は絶対見るぞ!(原作まだ三部読み終わってないけど。)本も既に何冊か購入してるし、先月からずーっとちまちま読んでる本もあるので、変わらず読書の勘を取り戻していきたい。