映画
メアリーとエリザベス
Netflixでたまたま見つけてシアーシャ・ローナンなら絶対に面白いやろということで見てみた。序盤でかなり置いてけぼりになったので英国王室のWikipediaを参照した上での感想だけど、ヘンリー8世の大きな影を感じずにはいられなかったな。終生子をもうけず結婚もしなかったエリザベスⅠ世。婚姻を繰り返さざるを得ず、子をもうける他なかったメアリー。ヘンリー8世があんなに好き放題できたのに、どうして彼女たちは幸せになれなかったのか。なぜ君主なのに周りの男たちに振り回さなければならなかったのか。彼女たち二人だけで正直に対話・決断できたなら何か変わっていたのではないか。同時期に『サイレントヒルf』をゲーム実況で見ていたのもあって、なんで女の幸せって一通りしか用意されてないねんと四方八方に叫びたくなった。最後の二人の密会は苦しいけどとても見ごたえがあって感動した。マーゴット・ロビーが英国女王!?って思ったけど白塗りが最高に似合ってたので文句ないです。悪口ではなく、「体裁のためにそうせざるを得ない」「メアリーとの対比、老い、弱さ等の批判をはねのけなければならない」という苦悩が白塗りに絶妙に表れていたので、素晴らしい配役だったと思った。
K-POPガールズ!デーモンハンターズ
主に子持ちの同僚から「これが今の流行りやから!時代に置いていかれる前に見ときって!」と散々おすすめされたので半分嫌々見た。でも予想に反してすごい面白かった。絵が無理すぎて忌避してたけど、話やキャラは意外としっかり作り込まれてて、なにより少し影のある美少女戦士ストーリーなのが、なるほど子どもはハマるなと納得した。『セーラームーン』『CCさくら』『おジャ魔女どれみ』を通った元女児がこれをバカにすることはできないかな。他の人の感想にもあったけど、かなり駆け足で後半あまり深堀りや根本的解決が進まず不完全燃焼で終わってしまったのはちょっと残念。特にタキシード仮面ポジはもうちょっと上手く締め括ってあげてほしかった。二次創作がはかどりそうな終わり方ではあったけど。でも元はこの倍の長さだったらしいし仕方ないのかも。特に素敵だと思ったのが、主役三人は確かに細身の美女なんだけど、めっちゃ食べるしスカートも履かないし黒髪ストレートじゃないし表情豊かかつ結構ハチャメチャで、いわゆるテンプレの「女の子らしさ」から解放されているところ。とても現代的美少女戦士だなと感動した。
ミス・シェパードをお手本に
Netflixでたまたま出てきたの見てみた。原題『The Lady in the Van』の方が絶対いいと思うんだけどそれはさておき。ホームレス役のマギー・スミスがもうさすがとしか言いようがない。紅茶を一杯いかがと勧められて、「そんなの悪いよ。カップに半分で十分さ」と返すような憎たらしさが最高。調べたら舞台版からの続投らしく、どうりで本人かと思うような自然な振舞い方だと。内容はロンドン流コメディなので、分かりやすくゲラゲラ笑うというよりブフッと下品に吹き出したくなるような、エスプリが効いている感じ。それが見ているうちに癖になるし、いかにも英国人が好きそう。派手さはないけどこういう皮肉めいた笑いとヒューマンドラマってたまに見ると心にしみるよね。話がピンと来なくても『ザ・クラウン』『ダウントン・アビー』『ハリー・ポッター』など英国作品が好きなら見て損はない。BBCがこれでもか!と財をつぎ込んで国を代表する役者を取り揃えてるのでそれだけで楽しい。「自分を物語にするのではなく、物語に自分を見いだすのさ」という台詞が私には刺さった。
ドラマ
私は生き延びた:韓国を揺るがせた悲劇の中で
ドラマというかドキュメンタリー。先に言うけど、メンタルが安定している時しか見てはいけない。性的暴行・殺人・大規模災害など、眉をひそめたり目を背けそうになったり、人によってはフラッシュバックを誘うような映像が多分に含まれている。私は知らずに見たけど一応これは『すべては神のために』というカルト教団に迫ったドキュメンタリーの続編らしい。3~4話がその話だった。でも一番頭を殴られたような衝撃を受けたのは1~2話、ホームレスの収容所を装った児童誘拐・拷問施設の話。人類に絶望するぐらいおぞましかった。あまりに一人で抱えきれないのでRedditを閲覧したけど、世界中の人が同じように憤りを抱えていて少しだけ安心した。本当にどれも目も当てられないような救いのない話だったけど、少なくともこういうドキュメンタリーを全世界に公開できるところは韓国ってすごいな羨ましいなと思った。
ザ・ディプロマット(シーズン3)
外交ドラマを視聴していたはずが中年の危機を見せられていた。職場に制欲を持ち込まないでください。ただでさえ厄介な世界情勢を性的衝動でさらにややこしくしないでほしいとあれほど。シーズン4見るかは分からん。
本
アッシャー家の崩壊/黄金虫
先月見たNetflixドラマの影響。幸いにも大好きな光文社古典新訳文庫版がKindleアンリミテッドにあったので読んでみた。「ポーはコナン君の名前の由来で、ミステリー作家の先駆け」ぐらいの超絶薄っぺらい知識しかなかったので、正直とても面食らった。ホラーやないかい。ジャンプスケア系ではなく、読み手にじわじわ不愉快な気配を感じさせる系。厳密にはホラーではなくゴシック文学というらしい。ドラマの鬱々・黒々とした雰囲気の源流を知り、むしろあんな面白いドラマによく再解釈したなと改めてドラマの評価が上がった。不気味な作品は私が今まであまり読んでこなかった系統だけど、恐怖と難解さに頭が蝕まれていく感じもこれはこれで面白かった。打って変わって『盗まれた手紙』『黄金虫』はエンタメ色が強く、現代的なノリで楽しく読めた。作風の幅が広くて面白いな、ポーは。(ヴァージニアとの結婚とか人間性はかなり眉を顰める部分があるけれど。)個人的には訳者の正直さ満点のあとがきに笑った。
死にたいけどトッポッキは食べたい
書店に行くたびキャッチーなタイトルが目を引いていた本。私好みではないなと薄々感じていたので見送っていたんだけど、著者が亡くなられたとニュースで見たので満を持して買ってみた。主題であるカウンセリングの記録は、生きづらくて大変そうだなとすごい遠くから眺めていた。反面、日記のような散文は私にも共感できるところがあった。ベストセラーたる所以は正直わからなかったけど、涙が出るほど著者の気持ちが分かるのであればカウンセリングに行った方がいいのではなかろうか。
サイレントヒルf
実況で周回プレイ見ただけの人間なので大それたことは言えないけれど、自ら遊んだ人はこれで満足できたんだろうか。ゲームを小説化する目的って大別すると2つあると思う。①既プレイ勢のIPに対する愛を深めるため、②未プレイ勢をゲームへ誘導するため。でも今作はどっちつかずな印象を受けた。超忙しい人のための『サイレントヒルf』まとめといった仕上がりなので、真新しい視点や補完要素が少ない(全くないわけではないけど非常に浅い)ため①目的で読むと物足りない。しかし②目的で薦めると全てにおいて説明不足なので、なんじゃこれで終わられてしまう可能性が高い。ゲーム自体が好きに考察してねっていう余白を持たせた作りなので仕方ないけどね。私が読みたかったのはゲームの文字起こしではなく、小説として完成された作品だったので残念ながら期待外れだった。
マンガ
銀河英雄伝説(1)~(33)
ウェブ版ファミ通のセール情報を見て、前から気になってたのでまとめ買いした。めちゃくちゃ面白い!『蒼天航路』を楽しく読んだ人間なので、こちらも非常に刺さった。ラインハルトが成り上がるまでが個人的には一番面白かったかな。こういうムカつく上司いるよね~ムカつく~とか思ってたらきちんと痛い目見るし場合によっては死ぬので爽快。いい奴もばたばた死ぬけど。上まで昇り詰めてからはなんか当たり屋みたいに戦争しまくってて微妙。専制主義と民主主義の対立はこのご時世に読むとなかなか耳が痛い。民主主義の方が理想なのは分かるけど、ラインハルトとトリューニヒト、そして現代日本を見ていると良識ある専制主義ならば反論できないのではって気持ちになる。合間に挟まる閑話休題エピソードもいい味出してる。キルヒアイスのオタク二人がエピソード対決して飲んでるの最高だった。この物語は結局どこに落ち着くんだろうか。すごく楽しみ。
原作が昭和の日本人男性によって書かれた小説であることは重々承知しているし、本当に面白いと思っている。そのうえで一つだけ言わせてほしい。西暦3千年以上、宇宙暦800年前後になっても女性の人権・社会進出ってこんなもんなの?女性がほぼいないし、いてもステレオタイプ。男性はあんなにも個性豊かなのに。しかも高名な男性のお引き立てがないと表舞台に出てこない。例えばマリーンドルフは一介の男性兵士より遥かに優秀なのにずっとお嬢さん呼びで、同等の一個人として認識されていない。帝国はなんとなく女性の人権に関する思想が大きく後退した結果だとは思うけど、同盟も微妙なんだよな。キャゼルヌ夫人とか絶対使える人材だと思うんだけど、「家事が得意」「旦那を尻に敷いている」ぐらいしかキャラ付けがなくて本当にもったいない。こんな優秀な人材を腐らせてるからズタボロになったんじゃないのと冷ややかな目を向けてしまう。何度も言うけど、80年代の日本人男性の頭にそんな発想がないことは百も承知。でも愚痴らせてほしい。そもそも女性の社会進出がもっと進んでいたら、戦争がこんなに長引くこともなかったのでは?と思いました。
ダンジョン飯(1)~(14)
セールしてた上に『銀英伝』のおかげでポイントが貯まったので、前々から気になってたから完走するか!ということで購入。グルメ漫画として失速するどころか、食育や食卓を囲むことの意義、さらには欲そのものまで盛大に風呂敷を広げて、それを上手く閉じるもんだから感動した。みんなが面白いって言うわけだ。最後の方は文字通り寝る間も惜しんで読んでしまった。これは非常に個人的な感想だけど、ここだけはアニメ化されたら絶対見ることができないと思うシーンがあったので、先に読了できてよかった。(鳥がね、大嫌いなんです。)
みいちゃんと山田さん(1)~(4)
SNSで見かけて怖いもの見たさで買ってみた。地獄と呼ばれる漫画は星の数ほどあるけれど、個人的にはこういう「福祉の手が届かなかった人」「異常を異常と知らず・認められず、助けを求める発想にすら至れなかった人」の類の地獄はかなり心にくる。そして往々にして本当に助けが必要な人は助けたくなる見た目をしていない。山田さんがいないと漫画が成立しないのは当然なんだが、救う覚悟もないのに軽率に近づくのはどうなんだとも思ってしまう。
都市伝説解体センター Parallel File(1)
このセンター長はヤバイ。ゲームをクリアした身だから言うけど、こんなにかっこよく描くなんて人の心がない。(絶賛しています。)平行世界線として非常によくまとまっているし、ホラーになりすぎないけどちゃんとヒヤッとする。さすがいしかわ先生。大好きなジャスミン先輩とメンがインでブラックなあの人の出番がイケてて最高。続刊も楽しみにしてます。
おわりに
別記事で書いたけど、10月は人生初F1観戦に出かけた。あっという間だったけどすごく楽しかったな。
オペレッタの鑑賞にも出かけた。オペレッタどころかオペラなんて見たの、これまた人生初。喜劇なので小難しく考えず気軽に楽しめた。『ファンタジア』のコンサート以来ちょこちょこシンガポールのオーケストラコンサートに足を運ぶようになったので、いつかこれもまとめたい。人気がないからなのか国がサポートしてるからなのか、結構チケットが安いのでふらっと行けるのが最高にいい。治安が良いから夜遅くなっても困らないし。11月も早速チケット買ってある。旅行もいいけど、こうやって近場で楽しめる趣味があるのも大事よね。





































































