空飛ぶ雑草

観た・行ってみた・食べてみたのログ置き場

2024年2月の見た・読んだ

映画

ニモーナ

 今さら見たけど最高だった。無骨だけど実直に成り上がってきた除け者 ✕ 民衆から大人気のイケメン貴族(しかも髪はラベンダーの香り)。人気も信頼も天と地ほど差がある二人が実は裏でデキてる、という所からスタートする物語。開始5分で「これ絶対オタク好きなやつ」とハート鷲掴みにされた。騎士学校編とエンディング後の同人誌ください。これをクィア要素抜きにしようとした上に制作中止したディズ◯ーは本当にどうかしてる。このでっけぇラブあってこそじゃん。ニモーナ自身もすごく味がある。基本コメディでスピード感あってサラッと見終えることができるので、気軽に沼へドボンしてほしい。

 そして、ただでさえ話が面白いのに日本語吹替キャスト全員が素晴らしすぎた。真面目で善人だけど不憫で早口で喋る樽さんとか世界で一番大好物。収録すげえ楽しかったんじゃねぇかな、特に地下鉄のシーンとか。金ピカの興津さんも実家のような安心感。一人語りするとき情緒むちゃくちゃになってるの可愛すぎる。ベテランかつBL作品経験者つれてくるのマジで120点のキャスティング。ニモーナ役に白石涼子さん当てるのも完璧すぎる。『スケダン』にしろ、陽キャヤンキーやらせたら右に出る者いなくないか。見習いくんに太田さん(山崎退)を採用したのも最高。1周目は字幕で見といてマジで良かった、初手吹替版で見てたら興奮しすぎで冷静に話を追えなかった恐れがある。本国キャストも全員ぴったりで最高。クロエ・モレッツ超かわいいよ。(メタル~!)語彙力足りなくて申し訳ないぐらいどこ取っても最高だった今月のベスト。

www.netflix.com

ディープブレス:呼吸、深く

 原題『The Deepest Breath』。フリーダイビングのドキュメンタリー。自分がスキューバダイビングから帰ったら見ようと思っててやっと見た。A24は毎度なんて良いものを作るのか。映像は実際に潜って撮られたものばかりだからとにかく美しい。のめり込むあまり、息を呑むというか自分も息を止めてしまう。ただ命の危険と隣り合わせなエクストリームスポーツなだけあって、終始緊迫感がある。「このドキュメンタリーは誰のためか」が最後ようやく明らかになる構成には泣かされた。日本人選手がしっかりフィーチャーされてたのも嬉しいポイント。

www.netflix.com

疫起/エピデミック

 2003年台北SARS禍の最中で突如閉鎖された総合病院で働く人たちを描いた映画。Netflixのあらすじ以外の前情報なしで見始めたら「突然病院を閉鎖したらそりゃパニックになるでしょ」と白けてしまったけど、調べてみて驚いた。なんと本当にそういう事件があって、和平医院と言えば台湾人の多くが、閉鎖された病院から抗議の垂れ幕を掲げストライキする医療従事者の姿を思い出すぐらい有名らしい。直近のパンデミックを経験した目で見ると「なんでやねん」の嵐だったけど、こういう事実を知るとシーンひとつひとつの重みが変わる。

 ただどうしても引っ掛かったのが看護師の安泰河。国境なき医師団に参加したいくせに、SARS最前線に飛び込むのはためらう姿には首をひねった。こういうタイプなら志願するのを恋人が止める、ぐらいの展開しそうなのに。延命治療を拒む末期がん患者の家族に説教するのも意味が分からない。「自分は地震で天涯孤独になって(≒だから最期まで家族を大切にしろ)」ってそれ相手に関係なくないか?治療費を負担するのはお前じゃないので説教する権利はない。(私はこんなこと言われたらグーで殴ってしまう。)あと医者とキスするのやめなさい。医療従事者が自ら積極的に濃厚接触してんじゃねぇ。

 ツッコミどころが目立ったのでヒューマンドラマとしてはイマイチだったけど、過去を風化させない取組という意義では素晴らしいし、だからこそ台湾国内では高評価なんだろうなと思った。

thetv.jp

バービー

 近しいけど趣味が違う人(大家とか)は面白かったと言い、遠いけど趣味が近い人(Twitterのフォロイーとか)は思ってたのと違ったと言い、なんでそんな意見が分かれるのか気になってたのをやーっと見た。MSストアで買ったので字幕版。結論、思ってたのと違ったに一票。ショーレースに負けたことも納得。監督賞とかは知らんけど、少なくともこれが作品賞を取るなら他のフェミニズム映画は怒っていい。

 まず冒頭から首を傾げた。「バービー上げ、既存の人形遊び下げ」ってのは違うだろ。女の子の遊びは母親ごっこだけじゃねぇ!って言いたいのは分かるけど、だからといって赤ちゃん人形ぶっ壊すのはおかしい。(ぽぽちゃんのお医者さんセットとかすげぇぞ。)幼子が赤ちゃん人形ぶん投げるところは、玩具メーカー勤めでもなんでもないけど胸が痛かった。

 一番混乱したのがターゲット層が不明瞭なこと。女性をエンパワメントするにも、男性を啓蒙するにも弱い。例えばグロリアの説得は女性陣からすると「知っとるわ」という話ばかりだが、男性にはたぶん理解してもらえない。(既に理解してる人ならああいうことは言わん。)ケンが「そりゃそうだろ、女なんだから」とか嫌な反論してさらにグロリアが解説する、とかすればいいんだろうけど、そもそもケンは人間界の様相だけ持って帰ってきて思想までは完コピしてないから無理。というか男性はケンの扱いに怒らないのか。知能もそうだが、バービーはいろいろいるのにケンはムキマッチョしかいないぞ。そして男女の分断に持っていって、お情け程度の橋渡し役がアラン一人ってのは無茶やろ。彼の存在ほぼ空気やし。バービーの勝利ってのもおかしな話だが、そもそもバービーランドも不平等だし仕方ないのかな。大統領が「いや最高裁をケンに任せるのはちょっと」って断るところは女の私でも傷ついたわ。

 バービーが人間界にもたらすのはポジティブっぷりだけで、大人を勇気づけるには物足りなさすぎる。子どもに明るい未来を見せたい割には単語が難しいし、子ども主体の話はほぼない。嫌な現実を改めて突きつけられて、若干(本当に若干)変化したのはバービーランドだけで、現実は相も変わらずジェンダー平等には程遠い。会社の役員もオッサンばっかで、これで若者に希望を持てとは無理な話。こういう面も含めて風刺や皮肉と取るにはある程度の教養がないと無理だし、そもそも笑い飛ばすには現実がまだまだ地獄すぎて笑えんわ。ほんまに誰向け?ハッピーな映画は嘘だろ。幸せになったのはバービーただ一人じゃん。

 映像はめちゃくちゃいい。私は人形遊びしないタイプの女児だったので想像でしかないけど、夢のドールハウスだなってのは伝わった。有名俳優勢ぞろいで画面が常に豪華。だからこそこれだけの実力者ぞろいならもっと深くて面白いものができたのでは?という疑問が残る。日本語キャストも豪華なので、機内エンタメとかであったら吹替版を流し見したいな。

wwws.warnerbros.co.jp

ドラマ

ブラッシュアップライフ

 方々からオススメされたのでNetflixで見た。確かにめちゃくちゃ良かった。子供時代に時間をかけすぎず、テンポを落とすことなくループするから飽きない。人生やり直しっていうありがちなテーマをどう終わらせるか気になったけど、後半ああいう風にハンドル切ってオチまで突っ走るのは予想外で純粋に楽しめた。物語の根幹を友情にしたのも素晴らしい。さすがバカリズム。私も老後は空飛ぶ車椅子の老人ホームに入りたい。アラサー(80年代後半~90年代前半生まれ)にぶっ刺さるネタが多いので同年代はぜひ見て感想語ろう。よりによって日テレ制作なのはめちゃくちゃモヤるけどね。

www.ntv.co.jp

MIU404

 続けて邦ドラ見たくなって、昔話題になってたことを思い出したので見た。面白かったけど Not for me だった。情に訴えるセリフが多くて、良くも悪くもあぁ日本の刑事ドラマだな〜と一歩引いて見ていた。菅田将暉クラスの悪がもっと見たかった。社会派と呼ぶには全く物足りないけど、日本のテレビの限界はこのへんだわな。ゲストも景色も毎話豪華で、特に山梨はまた行きたくなった。うどんも当然食べたくなった。この調子で『アンナチュラル』も見たかったけどNetflixに無かった、残念。

www.tbs.co.jp

夜に星を放つ

 Kindleアンリミで初めて失敗した。安い感傷のために他人を都合よく使うな!と絶叫したくなる短編集だった。「人肌恋しいから妹の彼氏にすがるOL」「大人への憧れがあるから人妻に告ってみる男子高校生」「妻と子が恋しいから隣家の人妻と家族ごっこする会社員」等々、キャラの動機がしょうもない割に行動の結果に対する責任を負えないやつばかり。それをさもいい話かのようにまとめられると虫酸が走る。読むのやめようか何度も迷った。(私がしょうもな!と切り捨てる部分が「エモい、分かる」ってなる人には刺さるんだろうな。)あげくシメは聡くて行儀の良い子どもが大人を癒やす話?しょうもないエモのために人を消耗するのもいい加減にしろ。あと男子高校生の話は、現代っ子こんなにバカじゃなくない?と首をひねった。作者の年齢がだいぶ上なのでジェネレーションギャップかもしれない。とにかく私の価値観と相性悪すぎたので、もうこの作者の本は読まない。

www.kinokuniya.co.jp

私の「結婚」について勝手に語らないでください

 韓国で非婚主義としてポッドキャストをやってる女性のエッセイで、原題直訳は『いや、今どき誰が』。「非婚」という概念がなるほど私にバチっとくるなと思って買った。実際は結婚批判でも非婚の取説でもなく、ラジオのような一人語りの裏に「こんな生き方もあるよ、人と違ってもいいんだよ」と優しさを感じる内容だった。最初は正直拍子抜けしたけど、まだ幼い甥姪の希望でありたいという意図に納得した。作者は恋愛するし動物好きだし、仕事はフリーランスで友達もめちゃくちゃ多いアクティブな人で、同じ非婚でも私と全然違う。韓国独特な生きづらさも多々伺える。それでもいい本だったなと思うのは、根本の「みんな違ってみんな良い」に深く共感したからだと思う。

 ちなみに、作者はなかなか家族仲が良い家庭に育った人なので、毒親持ちは注意されたし。

www.akishobo.com

君と夏が、鉄塔の上

 軽めの読み物を!と探してたらKindleアンリミにあった、推しYouTuber作の小説。瑞々しい青春小説でキャラも話もすごくかわいらしい。キャラクターそれぞれに作者の人格のカケラがうかがえて、普段から雑談やらなんやら視聴してる身としてはニヤついてしまった。結局あれは何だったんだ?という部分がかなり残されたまま終わるけど、中学生の夏休みなんて「少し不思議」ぐらいでちょうどいいのかもしれない。電線や鉄塔がない国に住んでるので、日本の景色が少し懐かしくなった。これは第二作らしいので、第一作も読もう。

d21.co.jp

おわりに

 今月は重ための本に手を出してしまった(まだ読み終わってない)ので、読み終えた本が少ない……。けど「毎月一冊以上マンガ以外の本を読む」という今年の目標は継続できているのでいいかな。上記以外では旅行ガイドをめちゃくちゃ読んでいる。今検討してるのはスペイン・イタリア・スイス!あの国気になる、ですぐガイドブックを手に取れる点ではKindleアンリミテッド最高すぎる。(Kindleアンリミ信者)(SNSより情報スピードは遅いが、その分正確でサクッとポイントが理解できる点はガイドブックに軍配が上がると思ってる。)

 あとスマホゲームにはまってしまったので、Netflixも全然見れてない。今遊んでるのは『レスレリアーナのアトリエ』と『Mini Metro(Google Play Pass)』と『ファッションバース(Netflixゲーム)』です。ていうかGoogle Play Passって何マジで。まだ無料期間中だけど対象タイトルが意外と多くて、これは良くない時間泥棒すぎる。Xboxゲームパスもまだ入ってるし、あぁこれ以上サブスク増やすのはまずい……。